くさつFarmers' Market

取材記事

2024.09.06

「まずは笑顔になって欲しい」笑み菓子souriantが目指す体に優しいお菓子

笑み菓子souriant[大津市]

草津駅から二駅離れた瀬田駅を最寄りに店舗を構えるのは、笑み菓子souriantです。グルテンフリーの焼き菓子を提供しており、マフィンが大人気のお店です。

店主の小原美砂子さんは、もともとは小麦やバターを使用したお菓子を作っていたそうです。しかし、仕事上でもパートナーである夫のとある一言で一転。現在は、米粉や米油を使ったグルテンフリーのお菓子へと大きく舵を切りました。

本記事では、なぜ小原さんがグルテンフリーの焼き菓子を提供するようになったのか、さらには、商品に込められた想いについて伺いました。

“ちょうどよく”付き合う、笑み菓子souriantのお菓子

笑み菓子souriantは「体に優しい」を目指して、グルテンフリーの焼き菓子を提供。人気商品は、米粉を使用したマフィンです。ほかにも、クッキーやタルト、チーズケーキなども提供しています。グルテンフリーの焼き菓子を提供する中で、小原さんが大切にしてきたのが「材料の選定」です。

焼き菓子に使用する材料は、できる限りどこの産地のものかわかるものを使用しています。米粉は、東近江市にある”丸宮穀粉さん”のものを使用しています。丸宮穀粉さんの米粉でマフィンを作ると、甘くてふんわりするんですよ。卵も滋賀県産のものを使い、滋賀県で手に入らないものでも、なるべく国産のものを選んでいます。

心と体に優しいお菓子作りを意識しつつ、小原さんはグルテンとほどよい距離で付き合っているそう。また、お菓子作りについても、「美味しさや体への優しさを大事にしていますが、こだわりすぎないことがこだわりかな」と言い、自身に合った“ちょうどよさ”で活動をしています。

グルテンフリーの焼き菓子を提供していますが、外食したときはグルテンが含まれている食品を食べたりもします。とはいえ、摂取しすぎるとしんどさを感じることもあるので、グルテンをゼロにはせず、ほどよく付き合っていくようなスタイルを取っています。

また材料も、お菓子の大半を占める米粉や卵はしっかりと選定していますが、豆乳などは、国産だったらいいかなと。こだわりすぎると作る方もしんどくなるので、こだわりすぎず、自分がちょうどいいと思う塩梅で活動しています。

(小麦や大麦・ライ麦に含まれるグルテンは、食品をふっくらさせたり、弾力を持たせたりする性質があります。一方で、グルテンを摂取することで腸の細胞が壊れ、倦怠感や頭痛を引き起こすことがあると言われています。)

夫の一言で美味しいだけではないお菓子へ

小原さんは、幼少期からお菓子づくりに興味を持っていました。高校卒業後は、調理学校に進学。卒業後は6年間、カフェでパティシエの仕事をして、その後の2年間は、パン屋で働いていたそうです。いつからか、「自分のお店を構えたい」という気持ちがあったという小原さんは2017年に独立を決意し、『笑み菓子souriant』が始まりました。

しかし、お店を構えた当初はグルテンフリーの焼き菓子ではなく、発酵バターや小麦粉を使用したお菓子を提供していました。考えが変わったのは、同じ建物で鍼灸院をしていた夫がきっかけでした。

夫は鍼灸院で健康について患者さんと話をしてるのに、私はバターや砂糖をたくさん使用した焼き菓子を出していることが気にかかりました。当時も、材料や作り方にはこだわっていましたが、“健康”にはそこまでこだわってなかった気がします。夫からの「健康についても考えてみない?」っていう一言で、自分の活動を見直してみることにしました。

笑み菓子souriantの名前には、「お菓子を食べて笑顔になってほしい」という小原さんの率直な想いが込められており、souriantはフランス語で「微笑み」という意味だそうです。お店の名前の通り、味だけでなく、健康にも考慮したお菓子で、お客さんに笑顔になってほしい。そんな想いを抱いて、グルテンフリーのお菓子作りへの挑戦が始まりました。

試行錯誤してたどり着いたしっとりした米粉マフィン

グルテンフリーの焼き菓子を作ると決心したものの、小原さんが納得できるものに辿り着くまでには時間を要したそうです。まず、大きな壁となったのは米粉独特のパサパサ感でした。

何度も試作を繰り返しました。夫は鍼灸院をやるまえは、和食の料理人でしたので、試作のたびに味見をしてもらっていました。「これは食べにくい」「パサパサしている」など、なかなか夫が美味しいと納得してくれるものを作れず、悔しくて泣くこともありましたね(笑)。

私の作るお菓子は、ヴィーガンではなくてグルテンフリーなのは、どうしても卵の風味はお菓子に必要だと思っているからで。卵の味わいが入ったしっとりしたマフィンが自分の納得した好みの味なんです。

たっぷりのカスタードがつまったマフィン

いろんな試行錯誤の末にいきついた米粉や水などの配合は、「今後は変えるつもりはない」と言う。また、小原さんは、くさつFarmers’ Marketに出店する農家さんの果物を使ったお菓子作りもしています。

この前は、大津市の仰木で活動をする“やまのしずく農園さん”の金柑と夏みかんを使わせていただきました。くさつFarmers’ Marketには、美味しそうな果物が沢山並ぶので、見るたびに使ってみたいなと思っていました。くさつFarmers’ Marketで、様々な農家さんと知り合うことができ、これまでも自分なりに食材を大切にしようと思ってやってきたのですが、より一層食べ物を大事にしていこうという気持ちになっています。

米粉でも変わらない美味しさを届けたい

​​最後に、今後挑戦したいことを小原さんに語ってもらいました。

ずっと米粉パンを試作しています。1年以上前に試作をしたことがあるのですが、うまくいかなくて、米粉パンは一旦止めていました。でも、知り合いから「米粉パンが食べたい」と言われて、もう一度チャレンジしています。

米粉のパンでも、違和感のないものを目指しています。どうしても米粉を使ってしまうと、モチモチ感が強くなり、時間が経つと硬くなってしまいます。小麦を食べて美味しいと思う感覚と同じように、米粉パンを食べて美味しいと思えるようなものを提供したいです。

執筆後記

「こだわりすぎないことがこだわり」という小原さんの言葉が自分をホッとさせてくれました。自分の身体と心を支えてくれるのが食事だからこそ、ストイックになってしまう時もあります。ですが小原さんの言葉を聞いて、ちょうど良い付き合い方をすることも、自分を大切にすることに繋がると考えるきっかけになりました。今後も、お菓子を通して笑顔を届ける小原さんの活動に注目したいです。