くさつFarmers' Market

取材記事

2019.05.01

食と農が暮らしの真ん中にある「わっか農園」。いずれは自家栽培の麦でパンやお菓子を。

わっか農園[長浜市]

(2019年5月訪問)

今回訪れたのは、琵琶湖の北東部に位置する長浜市木之本町のわっか農園さん。

まだ5月なのに夏のような日差しの日。木之本へ入ってからは車窓からの風が心地よく、体感気温が少し下がったように感じます。

民家の前を流れる水の音に癒されながら集落を抜けると、田畑が広がり緑いっぱいの景色が現れました。その美しい景色の中に「わっか農園」はあります。この圧倒的ロケーションに魅了され、3年前に移住されたのが貴島華奈恵さんです。

食と農を暮らしの真ん中に

華奈恵さんは、もともと天然酵母を扱うパンの製造・販売をされていました。”毎日食べる物を自分たちで作る”ということの楽しさ・厳しさを知っていく中で、興味が素材の方にも向いていきます。そして、食と農が真ん中にある暮らしをするべく、木之本への移住を決断されました。

まずは自分達で野菜や花を育て、試行錯誤を繰り返す日々。

「いずれは麦も自分で育てその麦でパンやお菓子を焼きたい。」と夢はまだまだ広がっている途中です。

わっか農園の名前の由来

”「わっか農園」は、循環の環(わ)、人のつながりの輪(わ)、環境の環(わ)を大切にしたいという想いから名付けました。その想いに沿って、暮らしと農を営んでまいります。”
ポケットマルシェ/プロフィールより引用

引っ越してこられた頃の畑は、放置状態で萱だらけ。今は野菜やお花が伸び伸びと育っています。最初に目を引いたのが、農園の名前と同じわっか(輪)の形をしたユニークな畑!

「お花畑のような畑でもいいじゃないか。」

「何も知らないのが強み。畑に常識はない。自由にやってみよう。」

育つ→種ができる→種が落ちる→育つ という自然の流れをリスペクトして、自分たちは育てるというより植物が育つお手伝いをしているというスタンスで野菜たちと向き合い、持続可能な農を目指されています。土は他の場所からは持ち込まず、あえて連作をしながら土づくりをされています。

「自分たちの想いと身のまわりを大切に生活をしていると、自然と人との輪もつながっていく。」

今回のファーマーズマーケットのご縁もそんなつながりの1つにあげていただき、私たちも嬉しい限りです。

ちょっとずつ自分たちで試しながら

ここで育つ野菜たちは、環境や生態系を考え、農薬や化学肥料を使用せずに育てられ、美味しく安心して食べてもらえるように、いかに自分たちが暮らすか、自然との共生を大切にされています。

「美味しくて、安心安全な野菜が育つ事へのフォローの仕方、表現の仕方はいろいろあってもいいのではないか。」

1つの理想として炭素循環農法を目指しながら自分たちがやりたい・しっくり感じる方法を取り入れ、日々発見をしながら畑と向き合ってられます。

昨年の台風時にトマトが倒れてしまったけれど、起こしてやるとその後も野菜が持つ力で育ってくれたそう。

野菜や花の助け合い

自然の力を引き出すために、身近にある循環素材を使い、土の中の微生物や虫たちの力を借りながら土の発酵を促し野菜が育つ手助けをされています。

例えば、クリムゾンクローバーが畑の周りにたくさん植えられています。華奈惠さんがこの愛らしいピンクのお花が好きだからというのも理由ですが、クリムゾンクローバーは植物の生育に欠かせないチッソ成分を供給してくれます。また、それらのコンパニオンプランツは害虫の天敵となる虫たちの住み家ともなり、農薬を使用せずに野菜を守る共助の「わ」の一部となっています。

 

スローな時間

貴島さんはこの地に引っ越してから以前と比べ、じっくりと「待てる」余裕ができたのだとか。

それは「わっか農園」の畑作業も同じです。より自然に寄り添いながら慌てずに。

私自身、最近どんどん旬が先取りされているなあと感じます。需要を考えると早いものは好まれ、高値で売れます。でも自然を考えると少し無理があるのかもしれませんね。

華奈恵さんは、パン作りも似ていると話されます。短時間で急かして焼いたパンよりも、その時の酵母の力や少しのイーストでじっくり寝かせ、その日の気温や気候に合わせて、じっくり膨らむのを待って焼いたパンは格別に美味しく感じるそう。

 

季節の手仕事

華奈恵さんは、桜の塩漬け・茶を摘んで茶づくり(写真)、野草積み、野イチゴ酵母など1年を通して季節の手仕事も楽しまれています。四季を感じ、自然の恵みと共に昔の人がされていた豊かな暮らしがここにはありました。本当の豊かさとはこんなところにあるのだというのを魅せてくださった気がします。

おやつにと自家製梅酒・野イチゴ酵母のマフィン・かぼちゃのマフィン・ローズマリーとオリーブのケーキをいただきました。

緑と青空の下でいただく手作りのお菓子たち、なんと贅沢なカフェタイム!!

とっても美味しかったです。自然の時間の流れの中で、丁寧に過ごされている姿がとても印象的で素敵でした。私も日々の生活を大切にしようと心が洗われるような時間を過ごさせていただきました。