くさつFarmers' Market

取材記事

2019.02.01

大地と人にいい農業を。 地域の未利用資源を活用する「楽農舎なごみの里観光農園」

楽農舎なごみの里観光農園[高島市]

(2019年2月訪問)

今回訪ねたのは、滋賀県高島市にある、楽農舎なごみの里観光農園さん。案内していただいたのは楽農舎の代表の坂下道良さん。

遊び心や新しい挑戦に溢れるパワフルな方で飄々とした姿で語る感じは、惹きこまれるものがありました。

 

農業にたどり着くまでの道のり

工業高校卒業した後、就職した企業では派閥争いや人間関係が恐ろしい世界で違和感を感じながら働くことに。しかし、その違和感はどんどん大きくなり精神的に不調を訴え始めたので転職。

次にしていた仕事は、トラックの製造業。自分で作るというところに楽しさを覚えた一方、作ったトラックが壊れた後、ただの産業廃棄物として循環する役割がないこと、月320時間以上の過酷な労働で心身ともにピークを迎えたことから脱サラを決意されます。

へとへとになって限界を迎えた時に

「どうせ疲れるなら自分のやりたいことで疲れたい」

サラリーマン時代も、自分でベランダでブルーベリーを育てていたくらいブルーベリーが大好きな坂下さん。農業にも興味を持ち始め、2005年に滋賀県高島市で「楽農舎なごみの里観光農園」がスタートします。

大地と人にいい農業をしたい。

体にいいものを作りたい。

地域の未利用資源を農業で活用した持続可能な農業をしたい。

命と食と農業のつながりを感じてほしい。

そんな思いで、農業をしています。

ー楽農舎ホームページより

大地と人にやさしい農業をするためにスタートした養鶏

「大地と人にやさしく」を考えた時に、大事になってくるのが土づくりです。

土づくりに必要なのは肥料なのですが、その肥料が鶏糞から自分たちで作れればウソ偽りなく、安心安全がより担保されるということで養鶏をはじめられました。

最初は50羽ほどだった平飼いのニワトリたちも今では800羽ほどに!

楽農舎の地域循環型農業

環境に負荷をかけず、いかに安心で安全な作物を作ることができるのか。

過剰品質(良すぎて買った人が驚くような商品)のものがどんどん減り、次の商品を買ってもらうためにわざと壊れる設計をしたり、利益のためにあえて少し粗悪な個所をつくる製品が増えていることに警鐘を鳴らされています。

資本主義社会の歪んだ部分だと。お話しさせていただく中で感じたのは、争いごとを好まず地域、環境のためにという思いの強さです。自分さえよければとか利益のためにという感じをみじんも感じさせない様子に感服しました。

ただ、いくら循環させようと思っても人と人とのつながりなのでどこかでその循環は切れてしまうことがほとんどらしく、やはり葛藤が多いということも。

 

実際の鶏舎の様子

まず見せていただいたのは鶏舎。元気いっぱいのニワトリたち。

1つの大きなハウスの中に200羽ほど。それが4,5か所ありました。

平飼いで飼われている鶏舎に実際入ってみて感じたのはニオイ。ゲージ飼いの鶏舎は多くの場合、地面がコンクリートのため、落ちた糞尿のニオイが臭くなりがちですが、平飼いの場合、地面に敷き詰められた土やもみ殻などが糞尿を発酵させ分解するのでクサくない。

鶏舎=クサい!みたいなイメージを皆さんお持ちだと思いますが、違いました。

 

平飼い卵の大変なところ

現在、市場に流通しているほとんどの卵はゲージ飼いで昼夜問わず光に照らされニワトリたちが卵を産み続けるのですが、どうして平飼いしないのか?

それは、卵を産卵する回数が大幅に減ることと、不安定になるから。

それ以外にもう一つ平飼いには問題があり、ニワトリが習性としてお尻をつつきあうから。

ニワトリは、血を好むらしく出産後に流血した箇所をつつき合い、1日多い時で3羽くらい死んでいる事もあるのだとか。そのため、他の養鶏所ではくちばしを切り落として飼育しているところもあるけれど、動物愛護の観点から坂下さんはやっておられません。

 

配合をこだわり抜いた飼料

お米、米ぬか、魚粉、カキガラ、油かす、おからなどを配合した飼料。エサからもわかるように人間でも食べられるような安全なものばかり。中でもおからは、地域のお豆腐屋さんから年間何トンも出るので産業廃棄物を減らす、地域循環に一役買っていたりもします。

(年間の生ごみの廃棄で10億以上かかっているとか)

 

畑の様子

養鶏で出た鶏糞をはじめとした有機肥料や自然素材の病害虫除けを使い、化学肥料・農薬不使用の循環型農業を開園から10年以上続けられています。

スーパーでよく見るダイコン、白菜、じゃがいもだけでなく、虹色菜、ビーツ、紅くるり大根など変わり種もたくさんありました。

いろんな品種にチャレンジする遊び心であふれる畑。新たに挑戦中の新品種も続々と植えられていました。

ニワトリも野菜もストレスがかかけないようのびのびとした環境づくりを重視。ストレスのかかったものを食べると、人間の中のストレス因子も増え病気になりやすくなるという論文も発表されたのだとか。

まだまだ環境に対して意識して行動している人は少ないけれど少しずつでも草の根運動を続けていきたいとおっしゃっていました。